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当院HPにアクセスいただきありがとうございます。インフルエンザの流行が始まりました。当院でも発熱で受診されインフルエンザA型と診断される方が増えています。
この流行期、時々お電話でワクチンの相談を受けることがあります。そんなわけで今回はインフルエンザワクチンの疑問について解説したいと思います。
なお、ワクチンや病気の情報を正確に伝えようとするとまどろっこしい言い方になることが多く、分かりにくくなるため、若干不正確になりますが分かりやすい表現でお伝えしようと思います。医療者にとっては不適切な表現かもしれません…

インフルエンザはどんな病気?

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することによって発症する感染症で、急な発熱や倦怠感などの症状を呈します。のどの痛みや鼻水、咳といった、いわゆるかぜの症状にとどまらず発熱・関節痛・倦怠感などの全身症状が目立つところがかぜとの違いです。ヒトに感染するインフルエンザウイルスにはA型・B型・C型があります。C型の頻度はかなりまれで、A・B型より軽症とされています。

インフルエンザの流行時期は?

例年は12月~3月頃が流行シーズンで、まず12月ごろからA型が流行しはじめ、年が明けた1~2月ごろからB型が流行することが多いのですが、A型とB型の流行の時期が重なることもあります。2026年の場合には8月下旬にインフルエンザの流行が始まったと厚生労働省から発表されています。2025年の時には9月下旬に流行入りしていますので2026年は前年より1か月早い流行入りと言えます。

インフルエンザワクチンを打てばインフルエンザにかからないの?

インフルエンザウイルスのために熱などの症状がでる発病といいますが、これを「インフルエンザにかかる」と表現する場合、ワクチンを打つことでインフルエンザにかかる確率は減りますが、さほど大きいものではありません。一方で重症化を防ぐ効果はしっかり証明されています。つまり、ワクチンを打つことによって、ちょっとかかりにくくなり、かつインフルエンザにかかっても重症化しにくくなります。

インフルエンザはとくに基礎疾患のある方や高齢者で重症化するリスクが高いのですが、インフルエンザワクチンは国内の研究では65歳以上の高齢者福祉施設において34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。また、6歳未満の小児では発病防止の有効率が60%と報告されています。有効率というのがわかりにくいかと思いますが、これは、ワクチンを接種せずに発病した人のうち60%はワクチンを接種していれば発病を防ぐことができたということを意味します。

ワクチンを接種したのにインフルエンザにかかったのでワクチンは効果がないのではないかと質問を受けることがありますが、有効率100%ではありませんのでワクチンを接種すれば絶対にかからないというわけではありません。かかる確率は減ります。一方で、肺炎・入院・死亡といった重症化の予防効果はしっかり示されています。

インフルエンザワクチンの効果はいつ頃でてくるの?

2週間~4週間です。ワクチン接種後2週間程度で予防効果が出始め、接種1か月後あたりが抗体価のピークとなります。接種後3か月程度はとくに高い効果があり、その後はゆっくりと効果が落ちていきます。2回接種した場合は1回目の接種から2~3か月後が予防効果のピークとなります。

インフルエンザワクチンの効果はいつまで続くの?

ワクチンの効果は接種後5~6か月続きます。つまり、一般には10月・11月に接種した場合、3月頃まで持ちますので、この冬(今シーズン)をカバーできると考えられています。

受験生なのですが、いつ頃打つのがいいですか?

簡単そうで少し難しい質問ですね。
ざっくり言えば、ワクチンの効果は接種後5~6か月続くので、10月に接種をしてもその効果は3月頃まで持ちます。つまり、10月にすぐ打ってしまってよいと思われます。
2月の受験の時に最も効果が出るように打ちたいんですけどいつ接種するのがよいですか?という質問もいただきました。細かいことを言えばインフルエンザワクチンの有効性は接種後1~3か月が最も高く、その後徐々に低下するけれど、接種後6か月の時点でもワクチン接種前よりはかかりにくい、と思ってもらうとよいと思います。

ここからは私見です。2月・3月の試験の時に予防効果が最も高くなることだけを目的にすれば12月頃に接種したいという気持ちも分かりますが、早くも流行し始めている状況で、接種を先延ばしにしているとワクチンによる抗体ができる前にインフルエンザに感染してしまう可能性があります。その場合にはしばらく熱でつらい思いをするだけでなく、学校を休んだり勉強できなかったり、ということになり、トータルでみてこれが好ましいかどうか考える必要があります。接種後3か月間と比べると接種後3~6か月は予防効果がやや落ちますが、その若干のワクチン効果の低下と接種を先延ばしにすることによるワクチン接種前感染リスクと比べれば、早めに打つ方が全体としてはメリットがあるのではないでしょうか。
というわけで、受験生の方も10月・11月のうちには接種することをおすすめします。

これまでのデータからワクチンの有効期間を考える

これまでに分かっているワクチン接種からの時間と予防効果のデータをお示しします。

ワクチン接種後の抗体価の時間的推移

Influenza Other Respi Viruses. 2023;17:e13072.から一部抜粋

ワクチン接種後の時間とインフルエンザ抗体価の推移です。赤い線が成人の抗体価の予測値です。week18の時点でワクチンを接種すると、その1か月後のweek22あたりで抗体価がピークを迎え、その後徐々に下がっていきます。このグラフだと、接種後1か月のweek22が最も抗体価が高く、ワクチン接種後3か月のweek30にかけて下がっていきます。接種後4カ月のweek34や5か月後のweek38は3か月後時点と比べて多少抗体価が下がりますが、その低下のスピードはそれほど急ではないようにみえます。つまり、3か月後と6か月後で抗体価にそこまでの違いはなさそうに見えます。6か月後でも基準値を上回る抗体価が得られました。ちなみにこの報告では成人と高齢者とでは違いがありませんが、H3N2、B型といったインフルエンザウイルスの種類によって多少グラフの下がり方が異なることが示されました。

 

ワクチン接種後1, 6, 12ヵ月後の抗体価

Vaccine 28 (2010) 3929–3935から一部抜粋

ワクチン接種から1, 6, 12ヵ月後の A/H1N1, A/H3N2, B 型の各インフルエンザウイルスに対する抗体価の推移を検討した論文です。これは49歳以下のグループの抗体価です。年齢別の検討とともに、ベースラインの抗体価が高い人と低い人で比較を行っています。例えば左のA/H1N1のところを見ると、グレーの棒グラフはベースラインの抗体価が高い人、白い棒グラフはベースラインの抗体価が低い人のワクチン接種1, 6, 12ヵ月後の抗体が十分ある人の割合です。ベースラインの抗体価が高い方が接種後の抗体価も高いことが分かります。また、1ヵ月後と6か月後での抗体価は差がなさそうです。さすがに12ヵ月後には低下していますね。実は、高齢者の方が1年後の抗体価の低下が大きいことも同時に報告されています。

 

ワクチンの予防効果 複数の症例対象研究の解析

The Journal of Infectious Diseases 2018;217:731–41より

ワクチン接種後、最初の3か月と次の3か月でのワクチン有効性の比較
接種後91~180日は15~90日と比較して
・A(H3)なら 予防効果が33%低下(有意な低下)
・A(H1)なら 予防効果が8%低下(有意差なし)
つまり、ワクチン接種後最初の3か月と比較して次の3か月の方が予防効果が低いという結果です。ただし、有効性の低下は単純な時間経過だけでなく、流行株とワクチン株の不一致、集団免疫、流行後半における統計学的検出力の低下などが関係すると指摘しています。

ワクチンの予防効果 接種からの時間別のワクチン効果

CCDR • June 2026 • Vol. 52 No. 6から改変

見にくいと思いますが、上から接種後1ヵ月以内、1~2ヶ月、2~3ヵ月… の期間のワクチンの有効性を示しています。右に行くにつれ有効性が高いことを示します。まんなか付近の”0″のところが有効性ゼロのラインです。時間が経つにつれ少しずつ有効性が低下していく様子が分かります。ただし、6ヵ月経っても有効性はゼロにはなっていません。
同じ論文の中では、高齢者(60歳以上)は効果の低下が明確で、3〜6ヶ月でかなり減少。一方で、子供や若年成人では効果の低下は少なく、全体的に効果が持続していることが示されました。

A型インフルエンザや60歳以上において、時間の経過による効果の低下が示唆されるため、遅めの接種が効果を高める可能性があるが、全体的な利益は小さくカバー率低下のリスクもある、として必ずしも接種を遅らせることがメリットが大きいとも言えなさそうです。

 

ワクチンの持続時間と年齢

・時間とともに効果の減弱する程度が年齢によって異なる。乳幼児と高齢者では減弱が早い

 

海外でワクチン接種時期の推奨はどうですか?

米国CDCでは原則として9~10月に接種することを推奨しています。

インフルエンザワクチンの接種によってインフルエンザを発病することはありますか?

注射のワクチンは不活化ワクチンといってインフルエンザウイルスとして働くことはなく、インフルエンザを発病することはありません。経鼻のフルミストは生のワクチンなのでインフルエンザを発病することはあり得ます。その頻度は1.8%です。

2回接種する場合は2回目の接種はどれだけあけるとよいの?

1回目の接種から最低2週間は空けます。高い効果を期待したい場合は1回目の接種の1ヵ月後がおすすめです。

 

まとめ:大事なことを繰り返します。

◎インフルエンザワクチンの効果は接種後2~4週で発現する

◎最初の3ヵ月は特にワクチンの効果が高く、その後少しずつ効果が低下するが、その低下の幅はさほど大きくなく、接種6ヵ月後でも有効性が消失するわけではない。10月にワクチンを打ったとしてもだいたいそのシーズン全体をカバーできる

◎受験生であっても10月、11月など早めの接種がよいのではないか(私見)

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
ワクチン接種、一度ご検討ください。
今後ともよろしくお願いいたします。