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ホーム お知らせ・コラム お知らせコラム インフルエンザの抗ウイルス薬は何がよい?
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はじめに

当院HPのコラムをご覧いただきありがとうございます。
今シーズンのインフルエンザは、11月に1回目の波が来て年末に収束したかと思いきや、1月からまた流行が再燃しました。例年はA型が12〜1月に流行し、B型は少し遅れて2〜3月に流行する傾向ですが、図1の愛知県のインフルエンザ発生報告数をみると、緑の線が2025年になりますが、11月頃、例年より早くA型の流行が始まり、ピンクの2026年のグラフでは1月~2月にB型の波が大きなピークを形成していたことが分かります。

2026年の第6週(=2月の第1週になります)をピークに、ようやく落ち着きついてきました。

 

【図1】愛知県のインフルエンザ発生報告数(2026年3月第3週現在)

今シーズンはこれで収束していきそうですね。とはいえ最近でも時々インフルエンザやコロナの方はいらっしゃいますが…。

今回はインフルエンザ治療についての続きです。インフルエンザについては以前のコラムもご覧ください(下記)

インフルエンザに罹患した時には抗ウイルス薬を処方されることもあると思います。最近は抗ウイルス薬もタミフルだけでなく、ゾフルーザ、イナビルなどいろいろと出てきました。その違いや使い分けについて説明したいと思います。

インフルエンザの抗ウイルス薬が勧められる人

次のような方は、インフルエンザが重症化しやすいとされています。これらに当てはまる方には、積極的に抗ウイルス薬での治療をおすすめしています。

・65歳以上の高齢者

・5歳未満の乳幼児

・基礎疾患のある方(喘息やCOPD、慢性の心臓・腎臓・肝臓の病気、糖尿病がある方)

・妊娠中の方、産後2週以内の方

・免疫抑制状態の方

インフルエンザの抗ウイルス薬の効果

抗ウイルス薬を使うことで、どの程度病気がよくなるのか、実は

症状改善までの期間が約1日短くなる

というものです。これは、どの薬を用いてもだいたいこれくらいです。

インフルエンザの抗ウイルス薬の副作用

いくつかの研究結果を合わせて解析した場合、タミフルとプラセボ(偽薬ともいいます。つまり抗ウイルス薬を飲んでいない状態を意味します)での副作用の頻度は、タミフルvsプラセボ吐き気がそれぞれ 10% vs 6%下痢6% vs 8% という結果でした。プラセボで吐き気6%というのは、薬を飲まなくてもインフルエンザの影響で6%の方は吐き気が出るということです。よって、タミフルを内服した時の吐き気10%がすべて薬のせいではないのですが、プラセボと比較して数%増えるということでしょう。下痢はプラセボ群よりむしろ少ないという結果でしたが、これらの値は研究によって値が異なります。一般には吐き気、嘔吐、下痢といった消化器症状が少し増えると言われています。タミフルの添付文書では悪心0.5%、腹痛0.6%、下痢0.9%と記載されています。これらの副作用はタミフルとゾフルーザではだいたい同じくらいです。CDC(米国疾病管理予防センター)ではゾフルーザの副作用はプラセボと同程度としています。

イナビルは吸入(デバイスが処方されて、口から薬剤を吸い込みます)なので吐き気・下痢は目立ちませんが、気管支れん縮といって薬を吸い込んだ刺激によって気管支が収縮するという副作用がありうるため、気管支喘息やCOPDの方には注意とされています。

インフルエンザの抗ウイルス薬3剤の比較

結論から言うと、タミフル・ゾフルーザ・イナビルで薬の効果はだいたい同じと考えてよいでしょう。これまでの報告で、症状改善までの時間が多少違うとか、重症者に対して入院を予防する効果があるかどうかというような細かい違いはありますが、患者さん本人が実感できるほどの違いではないと思います。

最も異なるのは投与法で、1日2回、5日間飲むか、1回だけ飲むか、1回だけ吸入するかという点です。副作用としては内服のタミフル・ゾフルーザは消化器症状が中心で、吸入のイナビルは気道症状が中心という点が異なります。

インフルエンザの抗ウイルス薬3剤の比較(詳しく知りたい方へ)

もう少し細かく知りたいと思った方には以下に説明を追加します。

タミフルについて

数多く投与されてきて投与実績、投与データが豊富なのは、日本でも2001年から使われているタミフルです。妊婦さん小児へも投与経験が豊富で実績があります。1歳未満についてもデータがあります。また、重症患者(入院患者)や免疫不全患者に対しての研究でも効果が示されましたので重症者・免疫不全患者でも有用です。

ゾフルーザについて

遅れて登場したゾフルーザは、当初プラセボとの比較やタミフルとの比較で効果ありという意見と、十分な効果とはいえないのではないかという意見がありました。ただ、その後、ゾフルーザの有用性を示すデータも増えてきて、ゾフルーザの効果はタミフルと同じように有効であろうという論調になってきました。複数の研究を合わせて解析する統合解析では、ゾフルーザはタミフルよりウイルス量の低下が速かったり、症状改善までの期間が短い傾向にあったり、また、入院の頻度が低かったりすることを示すものもあります。B型インフルエンザではゾフルーザはタミフルより発熱期間が短いという複数の報告もあります。

インフルエンザ患者にゾフルーザかプラセボを投与することで家族へのインフルエンザ感染を抑えられるかという点を検討した研究では家族の感染率はゾフルーザで9.5%、プラセボで13.4%と、患者さんを治療することで家族の感染を減らしたデータも報告されています。

ゾフルーザと耐性ウイルスの出現について

一方で、ゾフルーザを投与した後で変異ウイルスが分離されたことが話題になりました。治療後3~9日の時点で9.7%の患者検体で変異ウイルスが検出されました。とくに5歳以下では52%、6~11歳で19%、12歳以上および成人では10%と小児での変異ウイルス出現が目立ちました。ただし、変異ウイルス検出例と非検出例でゾフルーザ投与後の発熱期間や罹病期間に差はなかったという報告もあり、変異の有無が臨床症状に与える影響については今後の課題です。
なお、2026年3月時点で日本でのゾフルーザ耐性ウイルスの頻度は1.1%と報告されています。また、ゾフルーザの効果に影響する変異はほとんどがA型インフルエンザで検出されており、B型インフルエンザウイルスにおいては極めてまれといわれています。

インフルエンザA型・B型と薬剤の効果の関係

一方で、タミフルはA型とB型に対して効果が異なるのではないか、という報告があります。A型にはよく効きますがB型にはそこまで効かないというものです。その点ゾフルーザはA型にもB型にも同様の効果を示します。
B型インフルエンザに対してタミフルとゾフルーザを比較した研究ではゾフルーザの方が解熱が早く、入院率も低かったというデータがあります。とくにB型だと変異ウイルスを心配する必要もありませんし、B型にはゾフルーザを勧める意見も散見されます。
ただし、小児については5歳以下も含めて投与実績の豊富なのはタミフルなので、年齢別に分けて考えることも多いです。小児科学会の指針については後で紹介します。

薬の使い分け

そんなこんなでざっくりいうとこれら3剤の効果は似たり寄ったりB型インフルエンザならゾフルーザがちょっとよい妊婦さんはタミフル、小児は年齢別に要相談というところでしょう。

 

インフルエンザの抗ウイルス薬3剤の比較(表)

現在当院で処方している3剤の抗ウイルス薬の特徴をまとめます。

【表1】3剤のまとめ (PC用)

剤型 副作用 価格(3割負担の場合)  特徴
タミフル 内服 1日2回、5日間

錠剤またはドライシロップ

悪心・

腹痛

900~1,300円 ・長く使われていて実績がある
・子どもや妊婦にも使用実績が豊富・B型に対しては効果が落ちる
ゾフルーサ 内服 1回のむだけ 悪心・

下痢

2,000(80kg未満)~3,500円(80kg以上) ・解熱が早いという報告あり

・B型においてタミフルより効果が優れる
・耐性ウイルスの報告あり

イナビル 吸入 1回吸うだけ 咳・

咽頭違和感・

吸入時のむせ

1,800円 ・吸入できる方が対象
・喘息の方にはやや注意

*当院での値段です。これに加えて解熱剤などの薬代や診察料、検査料などが3,000円弱かかります

 

【表2】3剤のまとめ(スマホ用)

投与法 特徴 3割負担の時の薬の値段
タミフル 飲み薬 朝夕5日間 実績が多く小児や妊婦でも安心 900~1,300円
ゾフルーサ 飲み薬1回のみ 1回で終了

B型に強い

80kg未満は¥2,000

80kg以上は¥3,500

イナビル 吸入薬1回のみ 1回で終了

吸う薬

1,800円

インフルエンザの抗ウイルス薬:各学会の推奨

米国CDC

米国のCDC(米国疾病管理予防センター)のガイドラインではタミフル、リレンザ、ゾフルーザが同様に推奨されています。タミフルは小児を含むすべての年齢に、ゾフルーザは5歳以上に推奨されています。

日本感染症学会

日本感染症学会の「ゾフルーザの使用についての提言」ではB型インフルエンザに対しては(タミフルでなく)ゾフルーザを推奨、ゾフルーザ投与で家族内のインフルエンザ感染が抑制されることが期待される、変異を生じたウイルスが分離されても治療効果が無効になることはないとしています。

日本小児科学会

日本小児科学会の指針はタミフルはすべての年齢に推奨しています。ゾフルーザは6~11歳ではA型には慎重に投与、B型には使用することを提案(提案というのは推奨よりは一歩控えめのスタンスです)、12歳以上はA・B型ともに推奨しています。イナビルは6~11歳では吸入可能な場合に限り推奨、12歳以上では推奨、ただし呼吸器症状が強い・呼吸器疾患のある場合は要注意としています。つまり、12歳以上はどの薬剤も推奨11歳以下はタミフルが一押しだけどB型であればよく相談したうえでゾフルーザを使うのもあり、というところです。

 

結論:抗ウイルス薬の使い分け

-タミフル・ゾフルーザ・イナビル は効果の面ではだいたい同じ

-B型ではゾフルーザが少し効果が高いかも(症状が続く期間を短縮、家族内感染の予防)

-5歳以下ならタミフルが最も安心。 B型の小児はメリット・デメリットを要相談

-妊婦さんはタミフルが安心

-薬の投与法の差が大きい 朝夕5日間飲むか、1回飲むか、1回吸うか
5日間忘れずに毎日飲めるか、吸入ができるか といった背景を加味して相談

患者さんの背景を踏まえて考えるなら…

-1日2回、5日間忘れず飲めそうならタミフルもよいでしょう。

-朝夕内服を5日間というのは飲み忘れがあるかも!という方はゾフルーザかイナビル。1回の治療で完了します。

-最近喘息が不安定で…というような方は吸入薬でなく内服薬のタミフルかゾフルーザがよいでしょう。

-吐き気が気になって薬が飲めるかどうか心配、という場合は吸入薬であるイナビルがよいかもしれません。1回吸入できれば治療が完了します。

こんな感じで投与法によって使い分けている面も大きいように思います。

みなさんのご希望をお伝えしたうえで、担当医と相談されるのがよいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

◆参考文献

-愛知県感染症情報 2026年8週

-CDC: Influenza antiviral medications

-感染症学会:キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)の使用についての提言 2025/2026 シーズンに向けて

-日本小児科学会:2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針

-国立健康危機管理研究機構:抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス 2026年3月25日